アイクと呼ばれた男 (13)新型船・高栄丸

 浜田喜佐雄の入った大同海運は、船を持たない、オペレーター専門の会社だった。商売道具の船を持たなくて、貨物輸送の仕事が良く出来るものだと、世間は思うかも知れないが、ものは考えようである。他人の船を借りればよいのだ。1年間の用船期間と月間の用船料を取り決めれば、船主はオペレーターの集めた荷物を運ぶだけで良い。オペレーターは荷主廻りをして、採算の合う、より良い荷物を獲得すれば良いのである。
 オペレーターという言葉を最初に使ったのは、浜田と同郷の白城定一で、海運本場のイギリスでもそのような言葉はなかった。だが大同はスクラップ&ビルトという新制度に飛びついて、子会社に船を造らせた。新たなボスの田中正之輔はやり手で、政府米という荷物を見つけ、1万トンの大型船を建造し、イケイケドンドンだった。浜田は田中の下でテンテコマイの忙しさとなった。

 

内航海運新聞 2023/6/19