2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

吉田三傑「村井保固傳」を読む 48(最終回)

村井夫人キヤロライン 村井の學友、犬養毅は村井の親近者に、『今の内に村井の財産を日本に纏めて置くがよかろう、左もなければ萬一の際米國人に取られてしまうぞ』と忠告したことがある。これより先き村井は夫人や太郎にそれぞれ産を分けて、安處に差支えな…

吉田三傑「村井保固傳」を読む 47

最後の病氣と終焉 (2) 村井病気の報に最大の衝動を受けたのは、米國に病を養って居る村井夫人である。如何なる方法を執つても構わぬから、村井を米國に送つて欲しい。必要とあれば専門の医師、看護婦を同伴させて、一日も早く米国へ屈けてくれるやうと云…

吉田三傑「村井保固傳」を読む 46

最後の病氣と終焉 (1)昭和6年6月第89回の横斷で、渡米した村井は珍らしく長逗留をして容易に足を挙げなかった。否な挙げるに忍びないものがあつた。 彼の歸朝を促す用事は山積して居るにも拘わらず“I must go”と繰返し云ひ続けたにも拘らず、遂に丸4年と…

吉田三傑「村井保固傳」を読む 45

反對癖と包容量 次に趣味と云ふには当たらない嫌ひはあるが、村井にはよく反對する癖がある。 伊藤博文と陸奥宗光は互いに相許す親密な間柄であつたが、この伊藤にも反對癖があつた。陸奥が何か伊藤に献策しやうとする場合には、豫め甲、乙、丙の三案を用意…