「トランパーの雄」出版まであと129日(徳富蘇峰と古谷久綱)

さてと、亀さんが家出して20年。有為転変トランパーの旅も石炭商というベンチャービジネスにたどり着き、中古船ながら大型の貨物船を買うまでに伸し上げてきた。亀三郎はさらにテッペンをめざし人脈の発掘に精を出した。歴史は戦争という時代に突入し、軍需産業の石炭、海運が脚光をあびることになる。
山下亀三郎の自伝「沈みつ浮きつ」は速記の大家某子爵夫人が亀三郎の口述を記録したもので、昭和18年に発行された。
その序文をかの徳富蘇峰が達筆で認めているが、これを解読するのが難しい、しかし分かる人はいるものだ。(「トランパーの雄」に全文を記載)
蘇峰は同志社に入り、創設者・新島襄に心酔する。その後、国民新聞を立ち上げジャーナリストとして活躍する。その弟子に亀三郎の親戚古谷久綱がいるが、同志社から国民新聞の記者となり、東京高商(一橋大学)教授に転進したが、蘇峰の推薦で伊藤博文総理大臣秘書官に起用された。
一方、亀さんは乾坤一擲、5万円の船を買って、船名を郷里の名にちなんで「喜佐方丸」と命名した。しかし念願の船を持ったが、肝心の運ぶ荷物がなかった。勝田商会の集荷で上海航路に配船したが運賃が安く、毎航海大赤字で夜も寝ることが出来なかった。4万円の借金で買った船が、赤腹を見せて浮いている。ニッチモサッチモいかなくなった亀さんどうするどうする。
その時、頭に浮かんだのが総理秘書官の久綱である。話は思わぬ方へ展開するが今日はこれまで…
一句
喜佐方の春遠からじ亀の船