小林朝治画伯と坂村眞民先生 2

眞民先生もう一つの詩は、朝治の人間性について詠っている
朝治の子供らが「何で目のお医者さんになったの?」と聞くと
急患がないからだ、と真面目に語ったという

 (小林朝治)

わたしが見たのは
吉田風物詞帖
吉田風物画帖
信濃玩具版画集
小林朝治版画集
その他木彫一点
油絵三点
版画数枚
あなたは眼を病む人の眼を治した
そうしてあなたの眼は
常に澄み常に冴え常に物を見詰めた
岸田劉生のタッチを思わせるあなたの絵には
常に鑿で鍛えた鋭さがこもっていた
ああこの四、五日わたしは
あなたの話ばかりしていた
あなたの絵を版画を探してばかりいた
そうしてとうとう今日は
あなたの遺作数点を探しあてたのだ
全く知らぬ人の宅を三軒尋ね
食事中の人の家で版画一つ
疲れて寝ている人を起こして木彫一点
店の仕事をやめて貰って
油絵や版画集を一度に見せて頂いた
それにあなたが勤めていた病院の外科室には
もう一点作品があるという
それは明日見にゆこう
日曜画家とあなたは自分を言ったが
どうしてどうして
あなたの作品は陸離として
今でも鶴のように超然と
天の一角を飛んでいる

須坂紀行
須坂版画美術館の傍に「恋人の聖地」がある
春分の日秋分の日のころ
正午にリングの影が「ハート」を結ぶ

〇美術館からブログ本出版に当り
「小林朝治氏の著作権は法律上切れておりますので問題ございません」
と返事が来た
人間『小林朝治』のことはもっと世間に知らしむべきである

一句 須坂にてハートを知るや春ひかり


(坂村眞民先生 詩碑/吉田高校)