「トランパー」出版まであと14日(終戦と海運界)

亀三郎の築き上げた山下汽船の精鋭船隊は、この戦争で多くが水泡に帰することになった。飛ぶ鳥を落とす勢いの会社は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の占領政策日本郵船、大阪商船と共に財閥解体の憂き目をみた。社長の山下太郎は公職追放され横田愛三郎が代表取締役に就任した。
敗戦直後百GT以上の船舶は、一部の連絡船を除いて航行禁止となり、米国太平洋艦隊マッカーサー最高指令官によって日本の商船管理が行なわれた。

浜田喜佐雄が後日、終戦当時を語っている
 …戦時補償の切捨て二十六億円、戦時中の喪失船に対する保険もくれない。借金だけ残ってスッカラカンになってしまった。 
これに対して英国は戦事喪失船に対し二十億ポンドを補償している。あの時の二十六億円が今の日本海運にあってごらんなさい。大変なものだ。いま、計画造船がどうのこうのといっているのが、大体、計画造船などというものは、こうした政府のとった態度に対する罪ほろぼし程度のものでしかない。日本の政府も国民も、日本の海運の将来に対する展望ということにもっと抜本的な方針をもって臨むべきだと思う。
激動の世界、これは産業経済界のみではない。世界人類の直面する新しい歴史の展開である。常にその先端にある裸体の海運を政府も各政党も国民も何と見るか。これでよいのか。国家、国民の存亡と盛衰とともに考えねばならぬ。
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「トランパー」ムービー版総集編完成