シネマ「トランパー」その6

シーン11
(大正船成金)
大倉喜八郎の一言で目が覚めた亀三郎は人が変わったように仕事に打ち込んだ
正式に山下汽船を発足させ、船腹拡充する積極性を発揮した
欧州の戦雲が怪しいと睨んでいた、ロンドン駐在から日本の商社が鉄を買いまくっているとの情報を得た、亀三郎が大声で社員一同に叫んだ
「欧州の雲行きが怪しい、どこをみても一触即発だ。いつ戦争になってもおかしくない。戦争こそ船屋の稼ぎ時である、船を集めろ!若くても年寄りでも船であれば何でもいい、船をかき集めろ!」
サラエボの銃声1発でヨーロッパの戦端はで開かれた、欧州各国に世界各国が加わり第1次世界大戦が勃発した
世界各国の商船がヨーロッパに集結した為、船舶タイトになった
ドイツのUボートは無制限に船を撃沈した、戦争の長期化で多くの船が消滅した、
海運マーケットが暴騰、運賃、船価、用船料の高騰で史上最大のバブルとなった
にわか成金が街を闊歩した、同業の内田汽船は60割配当を発表して世間をあっと言わせた
亀三郎は「わが社もそろそろ自前の新造船をもたにゃいかん。これまでずっと中古の船を買って運用してきたが、このような姿勢では会社の勢いがそがれる。この際、一万トンクラスの貨物船をつくる」
会社の幹部が「社長、この大戦は長くても来年には終わります。船の出来上がるのは2年後です、とても間に合いませんよ」
亀三郎は力を込めていった「心配は分かる。しかし世間と同じことしていたら発展はない。郵船や商船と肩を並べるにはチャンスをつかまにゃならん。今がそのチャンスやないか」
1万トンの自社船「吉田丸」が竣工したがイタリア政府に買い取られた、何と亀三郎が造船所に払った10倍の船価に高騰していた