「トランパー」出版まであと73日(赤毛布の旅)

赤毛布は赤ゲットといって田舎者のことである。亀さんはロンドンで一番のホテルに泊まった。
自伝には「ロンドンのホテルでは、私は、なかなかいばっておった。ホテル・クラリッジといったらロンドンでも一番のホテルで、各国の王族が泊る。日本からでも、後藤新平が特派大使か何かで行かれた時に、泊っておった部屋だという所に、私は入れられておった。それは一階だった。
ロンドンの習慣では、一番いい部屋は主に一階にとってあるようだ。ところが、突然その部屋をどうしても変えなくてはなくてはならない事情が起って、七階の部屋に移った。その原因は、いかんながら、いま話すわけには行かないが…」とある。
亀さんが1階の貴賓室から粗末な7階の部屋に変えられた訳を、ある編集者がつきとめた。
それは余りにもみっともない格好、赤ゲットとはいえホテルマンは怒りますがな…
紳士淑女の誇り高きイギリスで、しかも超一流ホテルで日本から持参の浴衣がけで廊下を歩きまわったばかりでなく、ホールの真中、外人たちの間を『はい、ご免ね、ご免ね』とやったためだ。
しかしこれが亀さんの真骨頂、えせかん(南予の方言)である。誰も真似はできないのである。
一句
ロンドンの橋で亀さん夕涼み