「トランパーの雄」出版まであと124日(吉田町へ凱旋)

本書の副題は「伊予吉田の海運偉人伝」である。
山下汽船創設者・山下亀三郎とその弟子浜田喜佐雄の物語であるが、明治39年1月、郷里吉田町に亀三郎は妻カメと喜佐方丸に乗って凱旋した。
喜佐方村は大騒ぎで村民は吉田港に押し掛けた、両親をはじめ村長、日露戦出征の軍人らも招いた。亀さんは8歳の息子太郎を連れマストの下で鼻をギュンギュン鳴らし大演説をしたが、39歳の男盛りでまさに「飛ぶ鳥を落とす」勢いであった。その頃、日露の戦いで山下石炭商会の純利益は150万円に膨れ上がっていたが、公務員の初任給が50円、ビール大瓶19銭のころで個人商店として莫大な富は推して知るべしである。
喜佐方丸に上がった母・敬は、船室で数時間たっても動こうとしない。(亀三郎や、今晩この船に泊めてくれることはできないか…)これを聞いて亀さんは母の隠れたる慈愛を想い男泣きした。
一句
初春や母に奉げる男船