伊予吉田の文化遺産 (吉田風物畫帖/小林朝治著) 第9回 大信寺

大信寺の境内には「村上道順」の墓がある
吉田藩昔話によれば今治博多島から移った医者で、病家に到ると酒を所望し薬代は先方任せで請求しない
御典医たることを好まず一生清貧の町医として過ごした淡泊性なご仁だった
御用商人と三引船で旅行中、備後鞆港に停泊、保命酒店で酒を求めたが主人が急病で店は右往左往の混雑
そこで道順が診察した所(海鼠の食傷ならん)と言えば(果たして食したり)と答えたので
藁を刻み煎服せしめるとたちまちに治った、主人は礼は望み通りというと、(酒より外に望みなし)といった
元禄10年4月19日没、妻子なく菩提を弔うものがいないので当寺の住職が引き取り寺内に埋葬し回向をした
後人その徳を讃え祠堂を建て酒と豆腐を供え祈願するもの今に絶えないという