内航海運の使命

内航海運は国内基幹産業の海上輸送を担っており、安全・安定輸送の使命があるが、引受荷物の輸送量はしばしば景気に左右され変動幅が大きく収入が安定しない
1隻に投下する資本が大きく、不況の折でも稼働しなければならない、輸送量の変動に応じた船腹量の調整が直ぐには出来ない事が経営のネックになっている

昨年Lehman shock以来の荷物激減で船腹過剰となっている、運賃収入が激減すればオペレーターは船主に払う傭船料を下げざるを得ない、更に不景気が続くと傭船契約を解消しなければならない深刻な事態となっている

内航には「内航海運組合法」という特別法で、船主保護を目的とした船腹調整事業が認められている、現在「内航海運暫定措置事業」を行っているが、このシステムは以前の「スクラップ&ビルド」の焼き直しで数量制限カルテルが認められている数少ない制度である、世界でも有数な長い海岸線をもつ日本の地形から生まれた「一パイ船主」保護と不安定な経営を行っている内航海運の事情がある

「内航海運暫定措置事業」のスキームは船舶の自由建造が出来る事になっており好景気で船腹不足の場合は、建造納付金を納める事で船を建造出来る、今まで自動車産業の活況で鋼材等の荷動きが良く、本来スクラップすべき老朽船まで使用し更に新造船を建造して輸送量増加に対応して輸送責任を果たしてきた
平成10年から始まったこの事業は当初はスクラップする船の交付金で、多額の資金を投下してきたが、近年の景気で納付金収入により収支の改善が図られていた

しかし今回の100年に1回の大不況で自動車産業の減退、それによる鋼材減産で荷動きが半減しとたんに船腹過剰となった「スクラップ&ビルド」の調整がここ数年の好景気でスクラップが遅れた為だ、「誰もこの不況を予想出来なかった」後の祭りであるが順調に回復していた暫定事業資金計画も見直しを迫られる事になった


内航海運の舵取りは難しい、荷主との海上運送元請制度により船腹を提供し業界内での船舶融通等で効率的な運航を行っているが景気に左右される受け身のサービス産業である
タクシー業界が規制緩和で失敗したように、商売が受け身である運輸産業は自由競争には馴染まない、やはりある程度の規制は必要と思う

好不況の波は必ずあるので、船舶を増やす減らす場合は、ある一定の計算のもとで実施される必要があると思う、若しくは船腹過剰の場合は船をプールして長期係船する設備・支援策を講じる、また船腹不足の場合は外航船を臨時投入する方策等あるのではないか?

国は「内航運送業法」等の改正で自由競争、規制緩和の政策を内航海運にも適用してきたが、今回の経済危機で更に内航業者は淘汰されるであろう、現在業界は不況対策を検討中であるが、次世代につながる「内航海運経営安定対策」を考える事が大事ではないか